2019年4月1日月曜日

読書メモ「しびれる短歌」(睡眠時無呼吸症候群)





「しびれる短歌」(東直子 穂村弘 ちくまプリマー新書)の最初のほうに引用されていた歌が、強烈だった。








ほんとうにあなたは無呼吸症候群おしえないまま隣でねむる  鈴木美紀子



いや教えようよ、ヤバいよと、思わずツッコミたくなるのは、私自身がこの病気の怖さを知っている当事者(患者)だからだけども。


まともにツッコんだところで、この歌の抱え込んでいる黒い闇には勝てそうもない。



もしかしたら明日の朝、隣でねむる「あなた」は死んでいるかも知れない。

あるいは、居眠り運転などの重大な事故を起こしてしまうかもしれない。


そんなことになれば、「教えない」でいる人だって、確実に巻き込まれることになるだろう。


それでも「教えないまま」でいるのは、なぜか。

共に暮らし、「隣でねむる」ことが長く続くうちに、相手の存在をかけがえのないものと思う気持ちが、別のなにかに変わってしまったのだろうか。


かき回すのを忘れて放置していた"ぬか床"が、すこやかな乳酸菌に見捨てられて、もはや腐敗臭を漂わす汚物になり果ててしまうかのような、そんなどうしようもなさが、隣り合ってねむる二人を包み込んでしまっているのかもしれない。



「しびれる短歌」といっても、毒にあたってシビレるほうの「しびれる」だろう。



怖い歌だ。








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