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2016年10月1日土曜日

おおにし真・ミシェル ・リード 「忘れられた花嫁」 (記憶喪失)

忘れられた花嫁 (ハーレクインコミックス) Kindle版
おおにし 真 (著), ミシェル ・リード  (著)     Amazonで見る



《あらすじ》


キャシーは、双子を育てるシングルマザーです。

情熱的な恋人だったサンドロは、子どもができたと知らせた途端、キャシーを捨てて音信不通に。


最愛の子どもたちを育てるために、女性蔑視の社長の会社で頑張って働いていましたが、その会社が買収されることになり、新しいオーナーとして就任した人物は、サンドロでした。


パーティで再会したサンドロは、他人行儀のままでしたが、キャシーと会話するうちに、発作のような頭痛に襲われて、倒れます。



成り行きで介抱することになってしまったキャシーは、サンドロから、衝撃の事実を聞かされることになります。


交通事故で三週間昏睡し、目ざめた時にはキャシーとの交際についての記憶だけ、、完全に喪失していたこと。


その交通事故で、サンドロは婚約者に死なれ、自分だけ生き残ってしまったこと(婚約者のことは忘れなかった)。


キャシーから妊娠の電話連絡があった時点で、すでにサンドロは記憶を失っていましたが、ご丁寧に、その電話をもらった事実についても、再度きっちり記憶を消去していたこと。



とにかく、これてもかという勢いで、サンドロはキャシーのことだけを、忘却しまくっていたのでした。



妊娠中に捨てられたキャシーの心の傷を、もう一度えぐりなおして、塩を塗り込むような話で、ここからの復縁など、到底考えられそうにないのですが……そこはハーレクインですので、あれやこれやの事情をねじり倒して、元サヤにおさまります。



記憶喪失には、交通事故などによる外傷性のもの、脳の病気による内因性のもの、そして鬱病などの心因性のものがあるそうです。


サンドロは、交通事故にあっていますが、婚約者とキャシーの事で強いストレスも罹っていますから、記憶喪失の原因が、外傷性のものであるのか、心因性のものであるのか、作中でははっきりしません。


作中では、キャシーが愛想を尽かして去ろうとするたびに、記憶喪失と葛藤するサンドロがひどい頭痛に襲われます。放って帰れず、介護に奔走するキャシー。なんだかんだで、キャシーを引き留め、同意もなしに結婚を発表し、式の日取りまで勝手に決めてしまうサンドロ。


その結果、キャシーはサンドロから離れる機会を逃しつづけ、やがて、記憶もほとんど復活して、元の鞘に収まって結婚。







いいのかそれで、と思いますが、まあ、いいんでしょうね。
ハーレクインですから。

(´・ω・`)












2016年9月13日火曜日

南 潔 「質屋からすのワケアリ帳簿」  (記憶喪失)

~大切なもの、引き取ります。~ 上 
(マイナビ出版ファン文庫) Kindle版

南 潔 (著), 冬臣 (イラスト)






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《本文より》

「ああ。でも、陽子ちゃんを生んですぐに死んじまった」


鶴野の言葉が過去形であることに気づいたときにだいたい予想はついていたが、こうしてはっきり言葉にされると、なんとも言えない気持ちになる。

「もともと身体が弱い子だったんだ。その上、難産でなあ。子どもを腕に抱くことなく逝っちまって……本当にかわいそうだった」

「ましろさんの記憶は、最後まで戻らなかったんですか?」
「何度も治療を試みたが、無理だった。本人が、思い出すのを心のどこかで拒んでるようでな」

思い出すのを拒むとは、どういうことだろう。

「ましろさんが記憶喪失になったのは、川でおぼれたことが原因なんでしょう?」
「いいや。記憶喪失ってのは、身体に衝撃を受けるよりも、心に衝撃を受けてなることの方が多いんだ。ましろさんも大きな怪我はしてなかった。きっと記憶をなくす前に、何かあったんだろう。


Amazon Kindle Unlimited登録作品。(2016/9/11)

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(以下、ネタバレありです)

現代日本が舞台のファンタジー作品。

上の引用部分には名前が出てこないけれど、鶴野の話の聞き役になっている女性が、主人公の千里。彼女には、触れた物から過去の出来事を透視するという、特殊な能力があります。

この人が、とんでもなく不運な人でした。

千里の両親は、娘の人外な能力を嫌って育児放棄。その後さっさと他界。

唯一の肉親である叔父は、千里の貯金を全額奪って夜逃げ。

勤め先は、上司に横領の濡れ衣を着せられてクビ。

再就職がままならず、お金に困って、たまたま飛び込んだ質屋の烏島(からしま)に、能力のあることを見抜かれ、そのまま質屋で雇われることになるのですが、この質屋が普通の質屋ではなく、千里は何度も命を落としかねない事件に巻き込まれることになります。


上の引用箇所にでてくる「ましろ」という女性は、地元のいかがわしい神社が古くから秘密裏に行ってきた、人柱の儀式に巻き込まれた被害者でした。

ましろは儀式で川に沈められたあと、なんとか逃げ出して、鶴野という医師に救われたのですが、その時点で記憶喪失となっていて、自分がどんな被害にあったのか、思い出せないまま、陽子という娘を産み落として、亡くなります。

その陽子は、すでに成人して、地元の名家の使用人として働いていたのですが、実の母親の素性を探るうちに、何らかの事件に巻き込まれて、行方不明になってしまいます。

その陽子を姉のように慕っていた、名家の息子が、質屋の烏島(からしま)に捜索依頼を出したため、質屋で働くようになた千里が、自分の能力を使いながら、息子と一緒に陽子の手がかりを探すことになり、お産のときに陽子をとりあげた医者の鶴野を尋ねてきて、上の場面となったのでした。(長い説明)


物語の世界では、実に頻繁に出てくる「記憶喪失」ですが、事故による脳の損傷ではなく、極度の精神的ストレスによって、人生の全エピソードの記憶を失うという事例が、現実にそんなにたくさんあるものなのか、ちょっと疑問ではあります。というか、頻繁にないほうがいいですね、そんなこと。(´・ω・`)


けれども、PTSDについて調べていると、精神が堪えきれないほどの経験をしてしまうと、その記憶だけ、思い出せなくなるという症状があるといいます。

ましろさんは、おぞましい因習のせいで筆舌に尽くしがたい虐待を受けていますので、記憶がなくなっていなければ、とてもお産するまで生きていられなかったようにも思います。脳は、その人の人生を守るために、自ら壊れることもあるのかもしれません。


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2016年9月11日日曜日

蒼井紬希「あやかし恋古書店 」  (記憶喪失)


あやかし恋古書店~僕はきみに何度でもめぐり逢う~ 
(TO文庫) Kindle版
蒼井紬希 (著), nineo (イラスト)


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《本文より》

 記憶喪失になった原因は、今から十五年前の交通事故のせいだった。ちょうどその頃、紗月の両親は離婚で揉めて、父が家に帰らない日が多くなっていたらしく、母が勤めに出ている間は、祖母に面倒を見てもらっていた。そんなある日、十歳を迎えた誕生日に紗月は一人で神社に遊びに向かった。その途中で、交通事故に巻き込まれたのだそうだった。

 病院に運び込まれたときは重体で、奇跡的に回復したものの、事故に遭った前日までの記憶がさっぱり思い出せなくなっていた。医師に詳しく看てもらったところ、脳に損傷はなく、後遺症は心配ないとのこと。最終的に、記憶の喪失については、何か心理的なものが作用して一時的に思い出せないのかもしれない、という診断が下された。

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切なくも、ほのかにハッピーエンドで終わるお話でした。


漫画や小説など、物語のなかでは頻繁にとりあげられる「記憶喪失」ですが、本書のヒロイン、紗月のように、事故以前の人生の全エピソードがごっそり消えてしまうような事例は、現実には、とても少ないのだそうです。

本書では、事故直後の紗月の生活について、ほとんど語られていませんが、どうやら失ったものはエピソード的な記憶だけで、言葉や生活習慣などについての知識は、残っていた様子です。


紗月は、物語のなかで、二度、記憶喪失を起こしています。

その失われた記憶のなかで、紗月はかけがえのない出会いをしているのですが、いろいろな事情……主に、「あやかし」的な理由のために、その大切な人物と過ごした日々の思い出を、全て失うことになります。

けれども、絶対に忘れてはならない「何か」があるということだけは、脳か魂かわかりませんが、紗月の無意識に深く刻まれていたため、それに導かれて、出会いが再現されることになります。


人は記憶だけでは説明のつかない何かを抱えていて、それが本人の意志を超えたところで、人生を動かすことがあるというのは、なんとなく誰しも感じていることでしょう。

その「何か」は、運命という言葉で言い換えることもできそうです。

意識される記憶や、自分の意志を超えたところで、大きな出会いの法則が働いていて、それによって思いもかけない新しい人生を歩み出すことになるというのは、現実の事情や記憶に縛られ、閉塞感の強い生活を送っている大人や子どもにとって、心引かれるテーマです。

だから、多くの記憶喪失の物語が生み出されるのかもしれません。