「友情の証……愛の証」
中村敦子 (著), ミシェル・ダグラス (著)
ヒロインのメグは、持病の子宮内膜症の症状が重くなってきたため、1日も早い妊娠を臨んでいました。父親に愛されず、つらい思いを抱えて育ったため、自分はあたたかな家庭をつくりたいと望んでいたからです。
けれどもメグの愛するベンは、幼少時に、唯一の肉親であるネグレクトされていたトラウマから、家庭を持つことを極度に恐れて、世界中を旅する生活に明け暮れています。
それでも、自分の子どもの父親として、ベンしか考えられないメグは、人工授精による精子提供を、ベンに依頼します。
メグの病気を理解しているベンは、生物学的な父親になることについては同意しますが、親としての責任を負うことと、家庭を作ることは拒否。メグは傷つきます。
そんなとき、二人のトラウマの元凶である、メグの父とベンの祖母が、あろうことか恋に落ち、結婚することになります。
育児放棄で子どもたちを苦しめた張本人の結婚話と、ラブラブなありさまに、メグとベンは複雑な思いを隠せません。やがてそれは爆発し、四人それぞれが、蓋をして目をそらしていた過去の感情が、一気に晒されることになります…。
……
作中、メグは病気について、次のように語っています。
「お医者さまから、不妊症になる可能性があると言われたの」
「実は妊娠すると、子宮内膜症の症状が出なくなるのよ。しかも出産で治る可能性もあるの」
子宮内膜症は、不妊と深い関係にあるといわれています。
子宮内膜症の原因となる組織は、エストロゲンというホルモンの作用によって増殖したり剥離したりして、症状を悪化させていきますが、妊娠でエストロゲンが分泌されなくなると、症状の悪化が止まるのだそうです。
子宮内膜症による不妊の可能性が、結婚する気の全くないベンに対して、一か八かのアプローチをする勇気の原動力になったのだと思います。
ということは、もしもメグの子宮内膜症が悪化しなかったなら、この二人は一体どうなっていたのか…。
メグはベンを諦めて、もっと無難な結婚相手を探していたかもしれませんし、ベンも結局家庭に寄りつかないまま、一生を終えることになったかもしれません。
つらい病気ですが、この物語の中では、運命を好転させるきっかけになったと言えそうです。
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