姑獲鳥の夏(1) (カドカワデジタルコミックス) Kindle版
志水 アキ (著), 京極 夏彦 (その他) Amazonで見る
《本文より》
「うぶめってのは 慥かお産で亡くなった人の幽霊だろ?」
「いや、幽霊とは違うよ。これはお産で死んだ女の無念という概念を形にしたものだ。幽霊でない証拠に、個人に祟ったりしないし、だいいち恨めしいといった顔付きじゃないだろ」
「ああ慥かに。お産で死んだ女の無念の形なんて言われても……形のないものだから能く解らないな」
「しかし僕等は心をハートで表すぜ? 心だって像ではないのに、あの形を見ればその概念を理解できるじゃないか」
Amazon Kindle 期間限定お試し版(2016/09/14読了)
原作小説も読んでいますが、マンガ化されて「お試し版」になっているというので、さっそくダウンロードして読んでみたら、ものすごく読みやすく、面白くて……続き(もちろん有料)を読みたくなってしまい、大変困っています。(´;ω;`)
原作も、もちろん文句なしに面白かったんですけど、なにしろ長いんですよね、京極堂のウンチクが…。いやそれが魅力ではあるんですけども、あまりにも話が長いので、人物の魅力とか、人間関係の緊張感とかに、ワクワクドキドキする前に、大学の連続講義で脳と耳が疲労困憊したのと似たような気分になってしまうというのが、なんともはや。
マンガでは、京極堂の凄みや中善寺のキレッぷり、そして関口の、凡庸なのに何かがズレて、常軌を逸している雰囲気が、よく表現されています。
さて、この第一巻目では、関口が久遠寺家のゴシップを持って京極堂の家に話し込みにくる場面から、久遠寺家の長女である涼子が、中善寺の探偵事務所に依頼にきたところまでが描かれています。
そこで語られるのは、久遠寺家の次女、梗子が、夫の失踪前後から、20ヶ月にも渡って妊娠し続けているという状況です。
通常、人間の胎児はそれほど長く胎内に留まることは不可能と言われています。出産時期を過ぎてしまうと、胎盤が劣化し、生命維持が出来なくなるのだそうです。
極めて例外的な事例として、妊娠期間が1年を超えて無事に出産する場合も、世界にはあるのだそうですが、あまりにも長期にわたって出産とならない状況では、胎児が石灰化しているなど、特殊な状態になっていることのほうが多いようです。そのあたりは、ネット検索すると、いろいろと具体的な症例が画像付きで見られるようですが……私は調べずに置くことにします。(´;ω;`)
上に引用したのは、京極堂と関口が、久遠寺家の話から脱線して、姑獲鳥という妖怪について語り合っている場面です。お産で命を落とした女性たちということで、具体的な病名、症例名が出てくるわけではありませんが、多くは、何らかの理由で引き起こされた難産、妊娠中毒症や産後の感染症、出血多量などで亡くなったのだと想像されます。
そうした異常分娩は、現代日本では本当に少なくなっているそうですが、お産が命がけであることは、いまも昔と変わりません。そして、お産にまつわる物語も、数多く生み出されてきています。
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